■数時間後、神戸からみると「えーこんなところまで来ちゃったよー」的な、自分の母校にもほど近い他県の山の中にいた。外灯もないまっくらな道をえんえんゆくと、その道ばたにポツンとにこやかな女性が待っていた。「今、山から降りてきますから。今日はちょっと運動不足だからってさっき山にあがったんですよ」
えーと、もう八時で、この道路ですらまっくらけなんですけど、山って。山ってさ。などと思いつつ、夜目にもぼんやりと見えつつある谷間の広い広い棚田にみとれていると、やあやあどうもとヒゲのおじさんがやってきた。
さあ行きましょう!と懐中電灯とシートとお弁当をかかえ、某所にむかう。田んぼのあぜ道を進むと、数えきれないほどのホタルが舞っている。ふしぎにシンクロしあい、波のような点滅をながめながら、ビールと混ぜご飯のおにぎりと穀物+フルーツのケーキをいただく。暗闇でなにが入ってるかよくわからないが、どちらも自然の味がしておいしい。手のひらにホタルを乗せてみる。一匹だけでもすごく明るい。このひとつひとつの光が生きていると思うと、なんともいいようがない気持ちになる。ちなみにヒゲのおじさんの顔はまだよくわからない。
時間が過ぎ、そろそろホタルも静まってきたのでおじさんの家へ行く。家の前で立っていたら、おじさんがざると懐中電灯を持っていて、桑の実とりにいこう!桑の実!というのでついていく。とちゅう、黄色い木イチゴやスイカズラの花などもとりつつ、桑の木の下へ。ぽろぽろと落ちているので拾っていると、せっかくだしもっととっちゃおう!といいながらおじさんは暗闇のなか木に登ってバッサバッサ木をゆらしはじめた。なんだこの人は。顔はまだよくわからない。雨のように降ってくる桑の実をざるにいっぱい拾い、やっと家へ。
その家はどこもかしこも本があって、どこをみても高く積まれた書籍とメモ、どこかの国の布きれやオブジェにうずもれているおうちった。食卓にも、お手洗いにも、文字のない場所はなく、わたしたちは高い天井まである大きな本棚に囲まれたテーブルに着席した。やっと、おじさんの顔を確認。にこにことした笑顔が印象的なご夫婦。
さっきとったスイカズラを飾り、桑の実とお手製のケーキと木の実のジャム、南部煎餅でお茶をいただく。桑の実からはちいさいアリンコが適時はい出してくるが、もう、すでにどうでもよくなっている。適当にはらってモグモグ。おじさんとKさんが、りんごで有名な某県の出身ばかりか高校まで同じことが発覚し、りんご県の話でもりあがる。
日もかわってからやっと帰宅。なんだかまるでこの世のものとは思えない夜。おじさんは友人のYさんが通っていた学校の哲学の先生だといっていたがたぶん嘘である。今度あの場所に行ったら、家も何もなくて、「え?あんなところにはタヌキしかすんでいないよ」といわれるにちがいない。あんなにきれいな自然の中で木の実を食べ、本に囲まれ、しかも笑いを研究しているなんて、そんな素敵な話あるわけがない。多分、あのご夫婦はタヌキだとおもう。木の葉の似合うかんじもしたし。
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昨日、ホタル見てきました。
幻想的な光を放ってて、見とれてしまいました。
たまにしかみられませんが、不思議ですよね